はじめに
有価証券報告書の「経理の状況」における会計注記は、財務諸表の理解に不可欠な情報を提供するものです。基準の改正に伴い注記項目は年々増加しており、記載漏れや内容不備のリスクが高まっています。
本チェックリストは、主要な会計領域ごとの注記事項を網羅的に確認するためのツールです。
チェックリスト
1. 連結財務諸表に関する注記
- 連結の範囲に関する注記
- 連結子会社の数、主要な子会社名
- 当期に連結範囲が変更された場合、変更の事由と影響
- 非連結子会社がある場合、その理由
- 持分法の適用に関する注記
- 持分法適用会社の数、主要な会社名
- 持分法を適用していない非連結子会社・関連会社がある場合、その理由
- 連結子会社の事業年度に関する注記
- 決算日が異なる子会社がある場合、その決算日と仮決算の有無
- 会計方針に関する注記
- 重要な資産の評価基準及び評価方法
- 重要な減価償却資産の減価償却の方法
- 重要な引当金の計上基準
- 収益の認識基準
- 会計方針の変更に関する注記(該当がある場合)
- 変更の内容と理由、遡及適用の影響額
- 表示方法の変更に関する注記(該当がある場合)
- 会計上の見積りの変更に関する注記(該当がある場合)
- セグメント情報に関する注記
- 報告セグメントの決定方法、各セグメントの売上高・利益等
- セグメント利益と連結損益計算書の営業利益との調整表
2. 税効果会計に関する注記
- 繰延税金資産及び繰延税金負債の発生原因別の主な内訳
- 将来減算一時差異の項目別内訳(賞与引当金、退職給付、減損損失等)
- 将来加算一時差異の項目別内訳
- 評価性引当額の内訳の記載
- 税務上の繰越欠損金に係る評価性引当額(重要な場合)
- 将来減算一時差異等の合計に係る評価性引当額
- 評価性引当額の重要な変動の記載(重要な変動がある場合)
- 変動の主な内容
- 税務上の繰越欠損金に関する情報(重要な場合)
- 繰越期限別の金額、繰延税金資産計上額、評価性引当額
- 法定実効税率と税効果会計適用後の法人税等の負担率との差異分析
- 差異原因の内訳(永久差異、税率差異、評価性引当額の増減等)
3. 退職給付に関する注記
- 退職給付債務の期首残高と期末残高の調整表
- 勤務費用、利息費用、数理計算上の差異の発生、退職給付の支払い等
- 年金資産の期首残高と期末残高の調整表
- 期待運用収益、数理計算上の差異の発生、事業主からの拠出、退職給付の支払い等
- 退職給付債務と年金資産の期末残高と連結BSの退職給付に係る負債/資産の調整表
- 退職給付費用の内訳
- 勤務費用、利息費用、期待運用収益、数理計算上の差異の費用処理額等
- 年金資産の構成割合(株式、債券、一般勘定等)
- 計算基礎に関する事項(割引率、期待運用収益率、予想昇給率等)
4. 収益認識に関する注記
- 収益を理解するための基礎となる情報
- 主要な財又はサービスの内容
- 収益を認識する通常の時点
- 履行義務の充足の判定方法
- 取引価格の算定方法(変動対価がある場合)
- 履行義務への取引価格の配分方法
- 収益を理解するための情報(定量情報)
- 契約資産・契約負債の期首残高と期末残高
- 当期に認識した収益のうち期首の契約負債に含まれていた金額
- 履行義務の充足時期に関する情報
- 残存履行義務に配分した取引価格(該当がある場合)
5. 金融商品に関する注記
- 金融商品の状況に関する事項
- 金融商品に対する取組方針
- 金融商品の内容とリスク
- リスク管理体制
- 金融商品の時価等に関する事項
- 金融商品の帳簿価額と時価、差額の一覧表
- 時価の算定方法
- 金融商品の時価のレベルごとの内訳等に関する事項
- レベル1、2、3の分類と金額
- レベル3の時価の算定に関する情報
6. その他の重要な注記
- 減損損失に関する注記(該当がある場合)
- 資産グループの用途、減損損失の認識理由、金額
- 回収可能価額の算定方法
- 企業結合に関する注記(該当がある場合)
- 取得企業の名称、取得原価、のれんの金額と償却期間
- 重要な後発事象に関する注記(該当がある場合)
- 関連当事者との取引に関する注記
- 1株当たり情報に関する注記
- 1株当たり純資産、1株当たり当期純利益
- 潜在株式調整後1株当たり当期純利益(該当がある場合)
- 重要な会計上の見積りに関する注記
- 見積りの内容、金額、見積りの不確実性の内容
見落としやすいポイント
- 前期との数値の連続性:注記の期首残高が前期末の注記の期末残高と一致しているか。退職給付の調整表、税効果の内訳、契約資産・負債の残高で不一致が見つかることがある
- 会計方針の変更の影響額:遡及適用した場合の累積的影響額の計算と、比較情報の修正再表示が適切に行われているか
- 重要な会計上の見積り:2021年3月期から適用の注記事項。対象項目の選定と、見積りの不確実性に関する記載の充実度が問われる
- セグメント情報と他の注記との整合:セグメント別の金額と、連結財務諸表上の金額の調整が一致しているか
- 税効果の繰越欠損金の期限別情報:改正基準で追加された注記。税務上の繰越欠損金が重要な場合、繰越期限別の開示が必要
まとめ
有報の会計注記は、領域ごとに基準が定める記載要件を満たしたうえで、「利用者にとってわかりやすい記載になっているか」を意識することが重要です。チェックリストによる記載漏れの防止に加え、以下の3点を心がけましょう。
- 前期との連続性を確認する:数値の期首・期末残高の連続性、方針変更の影響の整合性
- 他の注記との整合性を確認する:セグメント情報と連結数値、税効果と法人税等の差異分析
- 基準改正への対応を確認する:当期から適用される新基準・改正基準に基づく追加記載事項