はじめに
企業会計基準第28号「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」は、繰延税金資産の回収可能性に関する情報を充実させるために、注記事項を拡充した基準です(第1項)。
決算開示の場面で「どの注記が必要か」を漏れなく確認するためには、チェックリストが有効です。本記事では、改正基準で追加された注記事項を体系的に整理し、重要性の判断基準も含めて解説します。
チェックリスト
A. 評価性引当額の内訳に関する注記(注8)
- 繰延税金資産の発生原因別の主な内訳に、評価性引当額を併せて記載しているか(第4項(注8)(1))
- 税務上の繰越欠損金の額が重要な場合、評価性引当額を以下の2区分で記載しているか(第4項(注8)(1))
- 税務上の繰越欠損金に係る評価性引当額
- 将来減算一時差異等の合計に係る評価性引当額
- 繰越外国税額控除、租税特別措置法上の繰越可能な特別控除も評価性引当額の注記対象に含めているか(第32項)
- 評価性引当額に重要な変動がある場合、その主な内容を記載しているか(第4項(注8)(2))
重要性の判断基準(第29項~第31項):
- 税務上の繰越欠損金の控除見込額が将来の税負担率に重要な影響を及ぼす場合
- 純資産の額に対する繰越欠損金の額(法定実効税率を乗じた額)の割合が重要な場合
- 評価性引当額の変動については、税引前純利益に対する変動額の割合が重要な場合(ただし税負担率と法定実効税率の差異が5%以下程度の場合は記載不要の可能性あり)
B. 税務上の繰越欠損金に関する注記(注9)【新規追加】
- 繰越欠損金が重要な場合、繰越期限別に以下の3項目を記載しているか(第5項(注9)(1))
- (1) 税務上の繰越欠損金の額に法定実効税率を乗じた額
- (2) 税務上の繰越欠損金に係る評価性引当額
- (3) 税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産の額
- 繰越期限別の区分を適切に設定しているか(第42項)
- 5年以内に期限到来の場合は比較的短い年度に区切ることが望ましい
- 企業の状況に応じて適切に設定
- 重要な繰延税金資産を計上している場合、回収可能と判断した主な理由を記載しているか(第5項(注9)(2))
重要性の判断基準(第47項):
- 純資産の額に対する繰越欠損金に係る繰延税金資産の額の割合が重要な場合
C. 個別財務諸表における注記
- 連結財務諸表を作成している場合でも、個別財務諸表で評価性引当額の内訳(区分開示)を記載しているか(第51項~第52項)
- 以下の項目は個別財務諸表では記載不要であることを確認しているか(第50項)
- 評価性引当額の変動内容(定性的情報)
- 繰越欠損金の繰越期限別の数値情報
- 繰延税金資産の回収可能性の根拠説明
D. 適用時の経過措置
- 適用初年度の比較情報について、以下の省略特例を適切に適用しているか(第7項)
- 注8の評価性引当額の内訳(合計額を除く)は比較情報への記載不要
- 注9の繰越欠損金に関する情報は比較情報への記載不要
見落としやすいポイント
- 繰越外国税額控除の取扱い:税務上の繰越欠損金だけでなく、繰越外国税額控除や租税特別措置法上の繰越可能な特別控除等も評価性引当額の注記対象に含まれる(第32項)。海外子会社を持つ企業は特に注意
- 変動の定性的情報の重要性判断:評価性引当額の変動額の重要性は、税引前純利益に対する割合で判断するが、税負担率と法定実効税率の差異が僅少(5%以下程度)であれば記載不要とされる場合もある(第36項)
- 個別財務諸表の省略範囲:連結財務諸表を作成している場合、個別では定性的情報と繰越期限別数値は省略できるが、評価性引当額の区分開示(数値)は個別でも必要(第50項~第52項)
- 繰越期限別の区分設定:基準は特定の区分を定めていないため、企業ごとに適切な区分を設計する必要がある。5年以内の期限分は細かく、それ以降はまとめるのが一般的
まとめ
税効果会計の改正注記事項は「評価性引当額の区分開示」と「繰越欠損金の詳細情報」の2つが柱です。特に重要性の判断基準は画一的ではないため、自社の状況に応じた検討が必要です。
決算ごとに本チェックリストを活用し、以下の3点を確認することをおすすめします。
- 税務上の繰越欠損金の額が「重要」に該当するか(純資産比率等で判断)
- 評価性引当額に重要な変動が生じていないか
- 繰延税金資産を計上している場合の回収可能性の根拠が説明できるか