はじめに
連結グループ内での持分変動(子会社株式の追加取得や一部売却)は、連結会計の中でも処理が複雑な領域です。特に2015年の基準改正以降、支配を継続している限りこれらの取引は「資本取引」として処理されるようになり、PLに損益が計上されません。
概要
非支配株主持分とは
非支配株主持分は、子会社の純資産のうち親会社に帰属しない部分です。
子会社の純資産 100億円、親会社持分 70%の場合:
親会社持分:100億円 × 70% = 70億円
非支配株主持分:100億円 × 30% = 30億円
処理の全体像
取引 | 支配の状態 | 処理方法 |
|---|---|---|
追加取得 | 支配を既に有している | 資本取引(資本剰余金で調整) |
一部売却(支配継続) | 支配を喪失しない | 資本取引(資本剰余金で調整) |
一部売却(支配喪失) | 支配を喪失する | 投資の清算・再評価(損益を認識) |
具体的な会計処理
追加取得の処理
例:子会社B社(純資産10億円)の株式を70%→90%に追加取得。追加取得の対価は2.5億円。
追加取得する非支配株主持分 = 10億円 × 20% = 2億円
取得対価 = 2.5億円
差額 = 2.5億円 − 2億円 = 0.5億円(のれんではなく資本剰余金から控除)
仕訳:
(借方)非支配株主持分 200,000,000 (貸方)現金預金 250,000,000
資本剰余金 50,000,000
取得対価が非支配株主持分を上回る場合、差額は資本剰余金の減少として処理します(のれんは計上しない)。
一部売却(支配継続)の処理
例:子会社B社(純資産10億円)の株式を90%→70%に一部売却。売却価額は2.5億円。
減少する親会社持分 = 10億円 × 20% = 2億円
売却対価 = 2.5億円
差額 = 2.5億円 − 2億円 = 0.5億円(売却益ではなく資本剰余金に計上)
仕訳:
(借方)現金預金 250,000,000 (貸方)非支配株主持分 200,000,000
資本剰余金 50,000,000
売却価額が減少する持分を上回っても、損益は計上せず資本剰余金で調整します。
支配喪失時の処理
支配を喪失する場合は資本取引ではなく、子会社に対する投資を清算し、残存投資を時価で再評価します。
例:子会社C社(純資産10億円)の株式を70%→15%に売却(支配喪失)。売却価額は6億円。
1. C社に対する投資を全て清算
- 子会社の資産・負債、のれん、非支配株主持分の連結消去
2. 残存投資(15%)を時価で再評価
3. 売却対価 + 残存投資の時価 − 投資の帳簿価額 = 子会社株式売却損益
この売却損益はPLの特別損益に計上されます。
実務上の留意点
資本剰余金がマイナスになる場合:追加取得等により資本剰余金がマイナスになった場合は、利益剰余金で補填します。
段階取得:関連会社(持分法適用)から子会社(連結対象)に移行する場合、それまでの持分法投資を時価で再評価し、差額を段階取得に係る差損益として処理します。
税効果:資本取引として処理された差額に対する税効果の計上が論点になる場合があります。
留意点
- 個別財務諸表上の処理との違い:個別財務諸表では子会社株式の追加取得は取得原価に加算、一部売却は売却損益を計上する。連結と個別で処理が異なる点に注意
- 子会社の利益剰余金の帰属:追加取得・一部売却の時点での子会社の利益剰余金が、親会社持分と非支配株主持分にどう帰属するかを正確に把握する
- のれんの取扱い:追加取得ではのれんを追加計上しない(差額は資本剰余金)。これは2015年の基準改正のポイント
- 支配の喪失 vs 継続の判定:支配の継続/喪失の判定は会計処理に大きな影響を与えるため、慎重な判断が必要
まとめ
取引 | PL影響 | 調整先 |
|---|---|---|
追加取得 | なし | 資本剰余金(差額) |
一部売却(支配継続) | なし | 資本剰余金(差額) |
一部売却(支配喪失) | あり(特別損益) | 子会社株式売却損益 |
非支配株主持分の変動取引は「支配を継続しているか」が処理の分かれ目です。支配継続中は資本取引としてPLに影響を与えず、支配を喪失した場合にのみ損益が認識されます。