はじめに

収益認識基準の適用により、工事契約や受注制作ソフトウェアの収益認識方法が体系的に整理されました。従来の工事進行基準・工事完成基準という枠組みから、「一定期間にわたる収益認識」と「一時点での収益認識」という判定フレームワークに変わっています。

概要

一定期間 vs 一時点の判定

収益認識基準では、履行義務の充足パターンに基づき、収益を「一定期間にわたり」認識するか「一時点で」認識するかを判定します。

一定期間にわたる収益認識の3つの判定基準(いずれか1つを満たせば該当):

基準

内容

該当例

基準1

企業の履行によって提供される便益を顧客が同時に受け取り消費する

清掃サービス、警備サービス

基準2

企業の履行が資産を創出又は増価し、顧客がその資産を支配する

顧客の土地上の建設工事

基準3

企業の履行が他に転用できない資産を創出し、完了した部分の対価を受ける権利がある

受注制作ソフトウェア、カスタムメイド製品

具体的な会計処理

進捗度の測定方法

アウトプット法

成果物の直接的な測定に基づく方法です。

測定指標

内容

適用場面

引渡し済みの単位数

完成した成果物の数量

均質な成果物を反復的に提供する場合

達成したマイルストーン

契約上のマイルストーンの達成

明確な成果物の段階がある場合

経過期間

契約期間に対する経過期間の比率

サービス提供が均等に行われる場合

インプット法

投入した資源に基づく方法です。

測定指標

内容

適用場面

原価比例法

発生原価 ÷ 見積総原価

最も一般的。工事、ソフトウェア開発

労働時間比

投入労働時間 ÷ 見積総労働時間

労務集約型のサービス

機械稼働時間比

投入時間 ÷ 見積総時間

機械による加工が主な場合

原価比例法の計算例

:受注制作ソフトウェア(契約金額1億円、見積総原価7,000万円)

【1年目】
発生原価:2,800万円
進捗度 = 2,800万円 ÷ 7,000万円 = 40%
認識する収益 = 1億円 × 40% = 4,000万円

(借方)契約資産  40,000,000  (貸方)売上高  40,000,000
(借方)売上原価  28,000,000  (貸方)仕掛品  28,000,000
【2年目】
発生原価(累計):5,600万円
進捗度 = 5,600万円 ÷ 7,000万円 = 80%
認識する収益(累計) = 1億円 × 80% = 8,000万円
当期の収益 = 8,000万円 − 4,000万円 = 4,000万円

(借方)契約資産  40,000,000  (貸方)売上高  40,000,000
(借方)売上原価  28,000,000  (貸方)仕掛品  28,000,000
【3年目(完成・引渡し)】
発生原価(累計):7,200万円(原価超過発生)
進捗度 = 100%(完成)
認識する収益(累計) = 1億円 × 100% = 1億円
当期の収益 = 1億円 − 8,000万円 = 2,000万円

(借方)売掛金  100,000,000  (貸方)売上高    20,000,000
                                    契約資産  80,000,000
(借方)売上原価  16,000,000  (貸方)仕掛品   16,000,000

見積総原価の変更

見積総原価が変更された場合、進捗度が変動し、認識する収益額も変わります。

:見積総原価が7,000万円から8,400万円に増加した場合(2年目終了時に判明)

修正後の進捗度 = 5,600万円 ÷ 8,400万円 = 66.7%
修正後の認識収益(累計) = 1億円 × 66.7% = 6,670万円
1年目までの認識収益 = 4,000万円
2年目の修正後収益 = 6,670万円 − 4,000万円 = 2,670万円

見積総原価の増加により、2年目の収益が4,000万円から2,670万円に減少します。

損失が見込まれる場合

見積総原価が契約金額を上回る場合(損失契約)は、損失見込額を引当金として計上します。

:契約金額1億円、見積総原価1.2億円の場合

損失見込額 = 1.2億円 − 1億円 = 2,000万円

(借方)売上原価  20,000,000  (貸方)工事損失引当金  20,000,000

実務上の留意点

原価に含めるべき項目:進捗度の算定に使用する原価には、設計・施工に直接関連する原価を含めます。ただし、異常な消費量の原価(手戻り、廃棄等)は進捗度の計算から除外します。

材料費の取扱い:工事の着手段階で大量の材料を仕入れた場合、材料費を進捗度の計算に含めると、着手直後に進捗度が過大になる場合があります。この場合、材料費を進捗度の計算から除外し、原価として認識するにとどめる方法が認められます。

留意点

  • 進捗度を合理的に見積れない場合:原価回収基準(発生原価の範囲で収益を認識)を適用する。プロジェクトの初期段階で適用されることがある
  • 契約変更の影響:スコープ変更や追加作業が発生した場合、契約変更の処理として取引価格や履行義務の見直しが必要
  • 四半期での進捗度更新:四半期決算でも進捗度を更新し、収益額を再計算する必要がある
  • 監査上の論点:見積総原価の合理性、進捗度の算定根拠は監査で重点的に検証される項目

まとめ

項目

内容

判定基準

3つの基準のいずれかを満たせば一定期間認識

進捗度測定

アウトプット法(成果物ベース)又はインプット法(投入ベース)

最も一般的な方法

原価比例法(発生原価÷見積総原価)

重要な見積り

見積総原価の正確性が収益額を左右

損失契約

損失見込額を引当金として即時計上

一定期間にわたる収益認識では、進捗度の測定の正確性が収益の信頼性を決定します。見積総原価の定期的な見直しと、原価管理体制の整備が実務の要です。